壁を天然塗料やけい藻土で塗り壁風に--。自然素材を原料とする建材を使った、「エコリフォーム」は、知識や手順を覚えれば素人でも難しくはない。材料が安全なので手軽に取り組め、メンテナンスも簡単。休日を利用して、家族や仲間と挑戦してはどうか。
ブルーがかった白壁と木目の美しい床が広がるリビングルームに光が差し込む。埼玉県越生町に住む、教師の並木道男さん(49)と妻で染織家の麻美さん(45)の家は一見、最近建ったモダンな注文住宅のよう。実際は、築二十数年の一軒家を家族らとエコリフォームした結果なのだ。
自然素材の塗料で
エコリフォームとは、科学物質を含まない自然素材の塗料や建材を使った改装。これまでの住宅は、建築時に化学塗料や化学合成の接着剤を大量に使うことが多く、シックハウス症候群と呼ばれる頭痛やと呼ばれる頭痛や皮膚疾患の原因になると指摘されてきた。壁や床など面積が広く、肌と触れあう機会の多い部分を中心に自然素材に置き換え、健康被害を抑える効果を狙うという。
並木さんは自分や子供達がアレルギー体質であることから改装に踏み切った。使用した建材は全て自然素材。白亜の壁にはけい藻土というプランクトンを原料とした素材、床には無垢(むく)の木材を使った。
建築関係の書籍を読んで勉強し、専門家に助言を求めたが、実際に施工したのは一家と友人家族ら素人ばかり。天井や壁に使われていたビニールクロスをはがして藻土を塗ったほか、床も板張りにした。三年前に居間と台所から始め、のんびり楽しみながら進めて、現在は寝室を改装中。「仲間が集まれば作業もはかどる。住んでいて安心できる理想の家に近づいています」と並木夫妻はほほ笑む。
居住者自身によるエコリフォームを推進しているのが、埼玉県川越市の工務店「家づくり工房」代表の落合伸光さんだ。「エコ・もの・ファーム」という団体を主宰し、環境に優しい建材の販売とリフォームの有料指導にあたっている。
同市内の民家を利用した生活クラブ生協の集会場。そこでは落合さんの指導もと、クラブに加盟する主婦らが協力して、六畳の和室を洋間に変える作業をしていた。
まず手をつけたのは壁の塗り替え。和室特有の繊維壁の上から塗るため、事前に植物油から作った自然系のシーラーなどの定着剤で下塗りをする。塗料をはがれにくくし、塗装面にアクやシミが浮き出るのを防ぐ。窓枠など、壁との境界部はマスキングテープで覆い、塗料がつかないようにする。
石灰やひまし油などが主成分の水性塗料「ナチュラルホワイト」(ブレーマー社)を使った。においもなく、体への影響も少ないという。ベンガラや黄土など天然顔料を混ぜて色づけもできるが、今回は白色のまま。まんべんなく塗ったら一度乾かし、二度塗りをして完成。ざらっとした風合いに仕上がった。
床下に竹炭仕込む
下地がビニールクロスなら、その上から直接塗るのも可能。クロスをはがすと有害な接着剤の成分が出ることがあり、上塗りはその点では安心だ。ほかに貝殻を原料とした塗料や、火山灰を使った壁材などもある。
続いて床の畳をはがす作業。畳を撤去したら、横木を約三十センチ間隔で打ちつける。この横木の間に調湿・脱臭効果のある竹炭を入れ、上から横木と直交させるような形で無垢板を張る。木材会社は各寸法の木材を用意しており、床材として加工してくれるので、作業は簡単だ。
入り口の扉もベンガラ染めの和紙などで張り替えた。仲間と話し合い、遊び心を生かす。床材が六畳分で約三万円、塗料が五リットル五千円など、総費用は約五万円。「業者に依頼した場合の三分の一から四分の一で済む。施工後の手入れも自分たちでできるので経済的」と落合さん。
ウッドデッキや木の板堀の防水・防腐加工もお勧め。戸外向けの防腐塗料は科学塗料が一般的だが、渋ガキの汁を発酵・熟成させた自然塗料「柿渋」(0.5リットルで七百円、木創)が活用できる。サンドペーパーをかけた上に念に一回程度、塗り重ねれば、防腐効果が続く。
今のところ環境に優しい建材を一手に扱う店は少ない。まずは雑誌やインターネットで情報収集してみよう。
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